認知症の方は「昨日の出来事は思い出せないのに、昔のことは詳しく話せる」「分からないことを自然につじつま合わせしてしまう」といった様子が見られることがあります。これは意図的にうそをついているのではなく、脳の働きの変化によって起こる自然な反応です。この記事では、「まだらな記憶」と「取り繕い」が起こる理由を理解し、不安を減らして安心につながる声かけや関わり方を、介護現場や家庭ですぐ実践できる形で紹介します。
01課題の本質
一方で、自分でも「何かがおかしい」「思い出せない」と感じることがあります。その不安や戸惑いを埋めようとして、自然に話をつなげたり、もっともらしい説明をしたりすることがあります。これが「取り繕い」と呼ばれる反応です。
周囲が「違うでしょう」「さっき言ったよ」と繰り返し訂正すると、自信を失ったり、恥ずかしさや不安が強まったりすることがあります。大切なのは正しさを証明することではなく、安心できる環境を整えることです。
02実践のコツ
1)まず気持ちを受け止める
内容の正誤を急いで確認せず、「そう思われたんですね」「心配でしたね」と気持ちに寄り添います。
その後で必要な情報だけを穏やかに補います。
本人が求めているのは、正解ではなく安心である場合が少なくありません。
気持ちを理解してもらえたと感じることで、不安が和らぎます。
表情が穏やかになるか、声の大きさや話す速さが落ち着くかを確認します。
「違います」「覚えていませんか」とすぐ訂正すると、防衛的になり会話が途切れやすくなります。
2)答えを求めすぎない
質問は一度に一つにします。
「今日のお昼は?」より、「ご飯と麺、どちらでしたか?」など選択肢を示す方法も有効です。
思い出せない場面で質問が続くと、取り繕いが増えやすくなります。
考え込む時間が長くなっていないか、困った表情が増えていないかを見ます。
立て続けに質問したり、記憶力を試すような会話になったりすると、本人の負担が大きくなります。
3)残っている記憶を活かす
昔の仕事や趣味、家族との思い出など、話しやすい話題を取り入れます。
写真や馴染みのある品物を活用するのも効果的です。
長く保たれやすい記憶を活かすことで、自信や安心感につながります。
笑顔や会話量が増えるか、自発的な発言が見られるかを確認します。
昔話の途中で現在との違いを細かく訂正すると、せっかくの安心感が失われることがあります。
4)安心できる環境を整える
予定を書いたカレンダーや時計、名札など見て分かる情報を活用します。
毎日の流れもできるだけ一定にします。
思い出す負担を減らし、「分からない」という不安そのものを少なくできます。
同じ質問の回数や不安そうな発言が減っているかを継続して見ます。
情報を貼りすぎると、かえって混乱することがあります。見やすく必要最小限にしましょう。
03避けたい対応
間違いを正すことよりも、「安心して過ごせるか」を判断基準にすると、穏やかな関係を築きやすくなります。
04チェックリスト
- 気持ちを先に受け止めている
- 質問は一度に1つにしている
- 記憶を試す会話を避けている
- 昔話や得意な話題を取り入れている
- 予定や時間が分かる工夫をしている
- 正しさより安心を優先している
05ミニQ&A
A. 多くの場合は故意ではありません。思い出せない部分を自然に補おうとする脳の働きであり、不安から生じる反応と考えられます。
A. 安全や医療に関わる内容は必要に応じて丁寧に伝えることが大切です。それ以外では、まず安心できる関係づくりを優先すると落ち着きやすくなります。
