施設入所後、「夜になると落ち着かない」「何度も起きて歩き回る」といった行動が強く出ることがあります。環境の変化は、認知症のある方にとって大きな負担です。本記事では、夜間不安が強まる理由と具体的な支援方法、そして家族にどう理解を求めるかまでを実践的に解説します。
課題の本質
見当識(時間や場所の理解)が低下している方にとっては、「ここがどこか分からない」状態で夜を迎えることになります。
日中は人の動きや声で保たれていた安心感も、夜になると刺激が減り、不安が前面に出やすくなります。
さらに、疲労や脱水、便秘、服薬の影響など身体的要因も重なることで、夜間せん妄のような混乱状態が起こることがあります。
実践のコツ
1)入所直後は「夜が不安定になる」と予測する
- 手順
-
入所後1〜2週間は夜間覚醒が増える前提で見守り体制を整えます。
事前に職員間で情報共有し、声かけ方法を統一します。
- 理由
-
環境変化によるストレス反応は自然な適応過程です。
問題行動ではなく「不安の表現」と捉える視点が重要です。
- 観察ポイント
-
入眠までの時間、覚醒回数、歩行の様子。
表情の硬さや落ち着きのなさ。
- よくある失敗
-
「昼寝が多いから」とすぐに生活リズムだけを問題視すること。
背景の不安を見落とすと関係性が悪化します。
2)安心材料を夜間環境に残す
- 手順
-
自宅で使っていた毛布や写真を枕元に置きます。
真っ暗にせず、足元灯で空間を把握できるようにします。
- 理由
-
見慣れた物は安心感を呼び起こします。
光があることで場所の混乱を減らせます。
- 観察ポイント
-
物に触れた後の表情変化。
起き上がる頻度の変化。
- よくある失敗
-
安全優先で私物をすべて片付けてしまうこと。
安心材料まで奪わない配慮が必要です。
3)短く具体的な声かけで安心を伝える
- 手順
-
「ここは○○施設です。私がそばにいます」と端的に伝えます。
長い説明は避け、同じ言葉で繰り返します。
- 理由
-
情報処理が難しい夜間は、短い言葉が届きやすいです。
繰り返しは安心のサインになります。
- 観察ポイント
-
声かけ後の呼吸の落ち着き。
視線が合うかどうか。
- よくある失敗
-
説得や注意口調になること。
安心よりも指示が前面に出ないよう注意します。
4)家族へ「悪化ではない」と説明する
- 手順
-
入所後は夜間行動が一時的に増える可能性を事前に説明します。
経過と支援内容を具体的に共有します。
- 理由
-
家族は「施設に入れたから悪化したのでは」と自責感を抱きやすいです。
適応過程であると理解できれば安心につながります。
- 観察ポイント
-
家族の表情や言葉のトーン。
不安や罪悪感が強くないか。
- よくある失敗
-
専門用語のみで説明すること。
具体例を交えてわかりやすく伝えることが大切です。
チェックリスト
- 入所前の生活リズム把握
- 夜間照明の明るさ確認
- 水分・排泄状況の確認
- 私物の配置調整
- 職員間の声かけ統一
- 家族への事前説明
ミニQ&A
A. まず身体要因(発熱・便秘・脱水など)を確認します。そのうえで環境や関わりを見直します。
A. 経過を具体的に説明し、「一緒に見守る姿勢」を共有することが安心につながります。
